人生の中で「陳述書」という書面を作る事はそうそう無いかと思います。なので、被告に関わる裁判所に提出する証拠のひとつにもなり得る陳述書をいざ作成しなければいけないときが来ても、何の為に作るの?書き方は?いつ出すの?と悩んでしまい、なかなか作成が進まない人も居ます。陳述書は裁判所において、非常に肝心な役割がある大切な書面なのでしっかりと書く必要があります。陳述書の書き方を紹介します。
陳述書とは?
陳述書とは証拠etcでは立証出来ない事を主張する為に提出する書類の事を言い、裁判所における裁判官に自身の言い分を伝達する為の書類でもあります。とくに刑事事件では、疑われている人についてよく知っている家族や友人、同僚etcが裁判所における裁判官に対して、その人に有利となる事情etcを立証する際にも使われています。
陳述書は何の為に提出するの?
陳述書を提出する目的は大きく分けて3つあります。
- 証拠だけでは読み取れない事柄を主張
- 証拠がない事を主張
- 伝え忘れの防止や、内容をスムーズに伝達する
例えば、知り合いとお金の貸し借りで裁判になったら、証拠として借用書を提出したが、そこにはその時の時系列ややり取りetcは書かれていない事がほとんどです。そこで、事実を具体的に伝達する為にも陳述書に貸し借りの流れetcの事柄を補足し、裁判所における裁判官に伝達する事が出来ます。
また、証拠を提出したいけど証拠が無くなってしまっているシチュエーションや存在しないシチュエーションでも、陳述書に纏めておけば、裁判所における裁判官に伝達する事が出来るのです。そして、裁判中の当事者尋問では口頭で伝えられる事に限界があるので、焦って伝え忘れが発生しやすくもあります。そこで予め陳述書に纏めて提出すれば、伝え忘れを防止する事も出来ます。
陳述書の基本的な情報
陳述書に関して多い疑問についてピックアップして回答していきます。
陳述書の書き方の手段
陳述書は手書きでもPCでも、問題はないです。ただし、手書きのケースでは読みやすく丁寧に、PCのケースでは出来るだけ推奨フォント「MS明朝」文字の大きさは412ポイントで書くようにして下さい。用紙の枚数は基本的にA4用紙3~5枚を目安に作ってみて下さいね。
陳述書はいつ出すの?
陳述書をいつ出すべきかは決まっていませんが、証人尋問もしくは当事者尋問のタイミングで提出される事が多いようです。
陳述書は誰が作るの?
陳述書の作成は本人(当事者)と弁護士です。弁護士を雇っているなら、弁護士が本人へヒアリングし、本人に確認してもらう為に「陳述書原案」を作成します。確認して修正箇所etcを修正していき、読み合わせも何度か繰り返して、少しずつ完成させるのが一般的な流れとなります。弁護士を雇っていないなら本人がすべて作らなければいけません。
陳述書の書き方における留意点
陳述書の留意点は以下のとおりです。
【書き方留意点①】具体的に記述
陳述書は裁判所における裁判官へ事柄を伝達する為の書類です。ですので、しっかりと伝わらなければ意味がないです。抽象的では内容が正しく伝わらない事もありますので、具体的な内容を記述するように心がけて作って下さい。
【書き方留意点②】時系列が前後しないように
時系列が前後するお話は非常に聞きづらいですよね。例えば以下の事象をバラバラに説明するとどうなるか見ていきます。
- AさんとBさんは〇〇でお酒を飲んでいた。
- AさんがBさんの言った事に対して否定をした
- AさんとBさんが口論になった
- BさんはAさんの顔を殴った
「AさんがBさんの言った事に対して否定をしたAさんとBさんは〇〇でお酒を飲んでいた。AさんとBさんが口論になった。BさんはAさんの顔を殴った」
何度か読むと理解出来るかもしれませんが、一度読むだけでは「?」になりますよね。時系列がバラバラだと、裁判所における裁判官が正確な情報を把握出来ない可能性も無きにしも非ずです。基本的には「誰が・いつ・どこで・誰と・何を」を古い順から書き出すようにして下さい。正書する前にメモに古い順から事柄を書き出しておくと、最後に纏めやすくていいですよ。
【書き方留意点③】長くなりすぎないように留意
内容は具体的に伝えなければいけません。しかし、だらだらと説明をしても正しく伝わらない可能性があります。陳述書に書く内容は、裁判所における裁判官に伝えたい事実のみを選び出し、簡潔な文章で纏められるように心がけて作って下さい。状況によっては箇条書きを用いる事もおすすめします。
【書き方留意点④】記述漏れのないように
陳述書に書くべき内容はもちろん
- 事件番号
- 陳述書の作成年月日
- 住所
- 氏名
- 押印
これらの記述も忘れずに行って下さい。陳述書をPCで作成したら、氏名は自筆で書くようにして下さい。押印は認印でもOKとされています。また、事件番号の記述もしっかりとしておいて下さい。
【書き方留意点⑤】裁判に関係ない事は書かない
自身はどうしても裁判所における裁判官に伝えたいという事があったとしても、それが内容と関係のない事であれば、書かないほうが無難です。裁判所における裁判官には裁判に関わる肝心な事がしっかりと伝わらなければいけませんので、関係のない事を記述して陳述書の内容が多くなれば読みも浅くなりますし、大切なポイントを見逃されてしまう可能性も無きにしも非ずです。
陳述書における書き方の要点
陳述書を書くときの要点について紹介致します。
【書き方の要点①】曖昧な部分も記述してOK
曖昧であれば記述しないほうがいいのでは…?と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、曖昧でも「曖昧」という事が書かれていれば問題ないです。問題になるケースは、曖昧な部分を曖昧ではなく「こうだった」と事実のように嘘をついてしまう事です。曖昧な事を書くなら「〇〇でしたが、正直記憶は曖昧です」etcと「曖昧」である事を伝達するようにして下さい。
【書き方の要点②】意見と事実を区別
意見は事実ではないです。人は自身の意見をあたかも「事実」かのように説明してしまう事があります。意見と事実を区別して書くようにして下さい。また、意見を書くときは「今」の意見なのか、もしくはトラブルが起こったときの意見なのかを伝達するのもポイントです。
【書き方の要点③】感情論は最小限に!
陳述書でよくあるのが、自身の感情ばかりが書いてあったり、言葉が抽象的であるケースです。「自身は悲しい思いをした」「ひどいと思った」etcの感情ばかりの陳述書は、客観的な事実を読み取る事が出来ませんよね。また「ひどい事を言われた」「ひどい事をされた」という抽象的な言葉もイメージし辛くわかりにくいです。
何の為に裁判所に提出するのか目的を明確に理解した上で書き方を考えよう!
陳述書は、裁判所における裁判官へ自身の主張や補足的事項を伝達する為に非常に肝心な書類です。陳述書の内容がしっかりとしていなければ、裁判所における裁判官に自身の主張する事を認めてもらえない事もあります。一体何の為に提出したのか…と努力が水の泡になって後悔しない為にも、陳述書は誰もが読んで理解が出来るような書き方で作るようにポイントや留意点に気をつけて下さい。