企業で業務に携わる人の中には、その企業に属していない出向社員や派遣社員の人もいる可能性があるのです。派遣社員は派遣元の企業と労働契約を結んでおり、出向社員は出向先企業と提携を結んでいます。その為、指揮命令権はそれぞれの企業元にあり、会社の中の同じような社員さんでも少し違います。
クライアントからその担当企業に常駐という形etc、出向社員は少なくありません。最初の取決めにより、出向請求書etcを書く必要が出てくるシチュエーションがあるのです。書き方や書式やテンプレートをご紹介します。
出向とは?
まずは、出向とは何かをご紹介しなければ出向請求書に関しても理解が出来ません。
出向元企業との契約は解除せずに別の企業に異動する事。
出向元の企業との雇用契約はそのままに、別の企業へ異動する事
簡単にまとめると、同じ勤務先での部署異動ではなく、他企業への部署異動という発想が近いかもしれません。
親会社から子会社へ
このようなシチュエーションでは、給与は親会社から支払われますが、現場での仕事は子会社側の指示による労働になります。
つまり、親会社から子会社への出向は異動のようなものですが、企業間で行われる規模の大きな異動になる為、異動する先の業務内容によっては転職と同じくらい、それ以上の負担を受けてしまう社員も居るのが実態です。職場の人間関係にも変化が生じますし、業務内容も全く違うという事も普通に起こります。
初めのうちは、全てに戸惑いを感じる事が多いです。スタンダードな異動でさえ、異動先の文化や人間関係に大きな変化があってストレスになります。これが出向となると、「〇〇子会社から出向してきた誰誰さん」という看板を背負っているのでプレッシャーが普通の異動とは段違いです。
ありがちなトラブル
トラブルに発展しやすいのが、社員への人件費(給与や賞与や残業代や交通費…)の支払いや請求先です。基本的に給与は親会社から支払われる事になって、仕事は異動先の企業の方針に従います。
派遣社員や出向社員は違う
派遣社員に登録をして、とある派遣先の企業の規則通りに働くものの、人件費(給与や賞与や残業代や交通費…)は派遣会社から振り込まれるというパターンも、大きい枠組みで考えると出向のひとつと考える事が出来ます。しかし、そもそも派遣社員と正社員の出向とは意味合いが違っていますので、性質的には違います。
人件費(給与etc)の決め方
人件費(給与や賞与や残業代や交通費…)を決める際は、必ず最初に以下の3者で取り決める事が必須になります。
- 出向先
- 出向元
- 出向労働者
何も取り決めずに働かせるという事はほとんどありません。十分な知識がないなら、このようなトラブルが起きてしまうリスクがあるのです。通常は、労働に関しては、出向先の就業規則に従った形での雇用となるのが通常です。
給与に関しては最初の3者間の取り決めがないケースでは、出向元の給与がベースになってくるのが通常です。
派遣や出向の違い
派遣社員と出向社員の大きな違いとは、「どこと労働契約を結んでいるのか」です。派遣社員のケースでは派遣元企業と労働契約を結んでいますが、出向社員のケースでは出向先企業と労働契約を結びます。
さらに出向社員のケースでは、以下の2パターンがあるのです。
- 「在籍出向」…出向元との労働契約にプラスして出向先と契約を結ぶ
- 「転籍出向」…出向元との労働契約は、一回解消して出向先のみと契約を結ぶ
在籍出向
二重に労働契約を結ぶ事になりますが、給料etcの待遇や就業規則について、出向元や先のどちらの企業のものが適用されるのかは、最初の契約内容によって変わります。
転籍出向
もともと勤めていた企業を退職して異動する事になるので、実質的には出向先の企業へ転職するのと同じ事です。
指揮命令権について
また指揮命令権については、派遣社員のケースでは派遣先企業にあり、出向社員のケースでは出向先企業にあるのです。派遣社員も出向社員も、指揮命令権が実際に勤務している企業にあるという点では、共通しているので、混同されがちです。
出向請求書でのトラブル
コンサルティングを行う会社によくありがちな事例ですが、クライアント企業に出向になる時もあるのです。対象の社員の給与は出向元が払うが、毎月、出向先に請求をするという事しか決めていなかった時にトラブルが起きやすいです。前述したよう就業規則や有休etcの制度は出向元の企業を元に実施するのが通常です。
しかし、残念ながら出向先はそうは思っていない事もあるのです。その際には、休んだ分を日割りで引いてくれと言ってくるシチュエーションがあるのです。基本的に金銭に関する取決めは法律で定められている訳ではありません。
通常は金銭の取決めは、業務委託契約書において前述した出向元、出向先、出向労働者にて詳細に取決めをする必要があるのです。
出向請求書は勝手に書くとトラブルに…!
出向請求書は、親会社と出向先との契約の内容にもよってきます。要するに、社員がどんな立場で出向先で働いているのか、という事です。このようなシチュエーションでは、しっかりとその相互関係を理解しておかないとトラブルに発展します。
よく分からない、という事で自由に資料作成してしまうと後々トラブルになってしまう事になるので注意が必要です。
- 基本給
- 交通費
- 社会保険
- 消費税
上記のような細かな規定を先に出向先としっかりと話し合った上で定めていくというパターンが良いです。仮に社員が戻ってきたとして、その後に問題が生じる事があり得ます。数年、働いていたとなると間違った金額も大きくなり、それをどう負担するのか裁判沙汰になる最悪の事態も考えられます。
出向請求書を書く際は、徹底した注意の上で書く事が求められます。
出向請求書の書き方や書式
親会社側が請求書を出向先に発行する事になります。ただし、注意しなければいけないのが項目です。親会社に勤めている状態であれば特に難しい事を考えず、社内規定に沿って請求書を作成すれば問題はありません。
しかし、請求書を送付するなら細かな部分etcを考えて請求する事になり、社内で働いている方に向けての請求書とは少し変わってきます。
例えば、基本給や通勤代金etcを請求する事は可能です。ただし、控除額となる社会保険の自己負担etcは親会社が支払う事になる事もある為、それらは請求する事は出来ないケースもあるようです。
また、消費税は不課税であったりもする為、それら法律の専門家や会計士etcに相談してから書き方を明確にした上で書く事をおすすめします。書き方は、基本的に請求書と大きく変わらないので特別なデザインや様式で提出する必要性はありません。
日付
まず、右上部分に日付を書きます。
宛名
左下部分には請求先の企業とその担当者の名前を記載出来る欄を作ります。○○株式会社御中○○殿etc、そういった宛名でかまいません。日付部分の下部には、出向先の株式会社○○様店といった形で書くと分かりやすいです。
タイトル
中央部に賃金請求書というタイトルを大きく記載し、どういった文書なのか相手にしっかりと理解出来るように作成して下さい。
請求内容
社員名を記載した隣の欄に何月分の請求書か、という事を分かりやすくする欄を作成してください。
上記のような書き方で、以下の情報を記載出来る欄を作成して下さい。
- 月額の基本給
- 通勤費
- 時間外労働手当
- 社会保険料利用者負担分
- 休日労働手当
振込先の情報や〆の挨拶
下部分に振込先や以上よろしくお願いいたします…という文言を添えて終了です。
とにかく分かりやすく!
揉め事にならない為に、誤解を生まない為に、分かりやすく明確に書いて下さい。
書式に迷ったらテンプレートを!
前述したように何をどう請求するかがポイントになっていきます。そんな時、いちからエクセルetcで書くとなると時間と手間、また間違いetcが発生してしまう事もあるのです。そういったシチュエーションを避ける為に、おすすめは書式がある程度整っていて書き方に迷う必要がないテンプレートの利用です。
インターネットではテンプレートが無料でダウンロード出来るようになっており、アレンジも自由に行なう事が可能です。出向請求書の例文や書き方やマナー&無料テンプレートより無料でダウンロードが可能です。書き方に迷ってどうにもならなくなってしまった時は、このようなテンプレートを見本や参考とし上手に利用して下さい。
出向請求書は相談しながら書式を固めていこう
一方的な請求をせずに相談しながら決めて下さい。ちょっとした伝わり方の違いで大きなトラブルに発展してしまう可能性を残してしまいますし、対象の社員に負担をかけてしまいます。ただでさえプレッシャーやストレスがある事をはっきりと認識しておくべきです。
それ以上にトラブルが起きて社員に過剰なストレスがかかって健康被害になってしまったり仕事に支障が発生してしまわないよう考慮が欠かせないです。ぜひ、出向請求書を書く際ははっきりと細かな部分まで取り決めを行った上で、作成出来るように努力して下さい。
出向社員や派遣社員を経験した方の中には、様々な色眼鏡で見られた経験がある人も少なくないです。
- 「企業の正社員から。」
- 「派遣社員だから。」
- 「出向社員だから。」
同じ会社で会社を大きくしていく目標が一緒なのにも関わらず、このような企業にとってプラスにならない事をしてくる人がいる悲しい現実もあります。出向請求書etc、きちんと書く事で社員を守るひとつの手段にもなります。